高層階を狙ったタワーマンション節税の終焉
2016/12/11
平成27年の相続から、相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられ、また最高税率も引き上げられました。これを受けてか、最近では各地で税理士や不動産会社が主催する相続セミナーが多数開催されています。
そんな中、今相続税対策は一つの「ターニングポイント」を迎えつつあることをご存知でしたでしょうか。
タワーマンションが相続税対策になるワケ
これまで相続税対策というと、不動産を活用した対策が効果的とされていましたが、その中でも特に節税効果が高いのが「タワーマンション」です。皆さんも、都心部のタワーマンションの価格が高騰しているのをご存知かと思いますが、ではなぜタワーマンションが相続税の節税になるのでしょうか。
まずはこれについて簡単に解説します。
【タワーマンションが節税になる理由】
タワーマンションはその見た目でもわかる通り非常に「縦長」です。そのため、一般的な低層マンションに比べると、敷地自体はそこまで広くありません。マンションを相続する場合の相続税の課税は、土地と建物に対してされ、マンションの土地は専有面積の割合に応じて土地の持分が決まります。
そのため、敷地面積が狭い割に世帯数の多いタワーマンションは、一部屋あたりの土地の持分が少ないため、相続税評価額も他の低層マンションに比べて非常に低く抑えられるのです。
高層階に行くほど節税効果が高まる
タワーマンションの高層階となると、さらに節税効果は高まります。タワーマンションの建物部分の評価額である「固定資産税評価額」については、同じ棟内であれば1階でも30階でも、北向きでも南向きでも、専有面積に応じて一律に同じ評価額となります。そのため、実際の市場価値の高いタワーマンションの高層階については、格好の節税対策のターゲットとなり、その結果、相続税対策目的で、相続発生前に多額の預金をタワーマンションに組み替えする人たちが続出したのです。
これを受けて、国もようやくタワーマンションの課税強化の方向に動き出しました。
タワーマンション課税強化案の内容とは
政府は2018年以降に引き渡す新築物件のうち、「20階建以上の高層マンション」については、高層階と低層階で固定資産税と相続税の格差を是正するとの方針を発表しています。これにより、市場価値と課税される税金が適切に比例することになるため、タワーマンション高層階における異常な節税効果は影をひそめることになるでしょう。
具体的には、タワーマンションの中層階を現行の評価額のままとし、それよりも上の上層階を段階的に引き上げ、下の低層階は段階的に引き下げる措置を検討しているそうです。となると、当然これまでのタワーマンションならではの旨味は半減することになるため、日本人の富裕層がタワーマンションを買わなくなる恐れが考えられます。
また、現在のタワーマンション市場は、東京都心部を中心にオリンピック効果なども相まって非常に高騰しており、一部ではすでに上がりきった価格が下落を始めているとの噂もあります。
またタワーマンションは、地震などの災害対策の面においては性能を疑問視するような声もありますので、今後タワーマンションの節税に旨味がなくなると、その人気が一気に下降することも考えられるでしょう。
課税強化の対象は「新築」に限定されているため、既存のタワーマンション所有者には直接的な影響はないかもしれませんが、新築の人気が下がれば当然新築価格が値下がりし、それに伴って中古市場も値下げになる可能性が高くなります。
そう考えると、タワーマンションを利用した節税は、高層階はより節税効果がありましたが、低層階も似たような効果になるのであれば、低層階もターゲットになる可能性があります。そのため、タワーマンションの高層階だけが価格が高くなる傾向は、終焉を迎えていくことになるでしょう。
再び注目を集める収益物件とは?
タワーマンションの節税組みが帰ってくる先として今再注目されてきているのが、一棟ものの不動産投資です。アパート投資やマンション投資は、賃料収益を上げながら節税対策と納税資金対策を同時に実現できるため、もともと非常に性能の良い相続税対策なのです。また、昨今は「マイナス金利政策」の影響で、超低金利状態ですので、条件さえ揃えばフルローンでも融資が下りる場合もあります。
なぜなら、都心の1棟投資では、土地評価が狭い物件だと収益は上がるのに、評価が低いペンシルビルのような物件はたくさんあります。このような物件の方が、融資を受けやすいだけでなく、収益性の価値もあるため、従前でも富裕層が狙っていた市場ですが、今後ますます増えていく可能性があります。
タワーマンションの高層階は、出口の際の売却価格が維持されやすい傾向があるため人気がありましたが、今後の値下がりリスクを考慮すると、1棟投資の方が出口の売却価格が取りやすい場面もでてきます。そのため、今後の不動産活用による節税のトレンドは、タワーマンションから再び1棟マンション経営にシフトしていくでしょう。
ただし、タワーマンションの場合は、貸すことを考えず、数年保有して売却がメインでしたので、リスクが限定されていましたが、1棟投資の場合は、店子がいるため、店子の入退去やトラブルなどによる、資産価値が大きく上下するリスクを抱えます。そのため、1棟投資の場合は、タワーマンションを購入するのとは別次元で、賃貸経営者としての自覚を持つことが必要になります。
何事にもそれなりのリスクがあることは理解したうえで、1棟投資をしていくことをお勧めします。