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空き家の本質的な問題と今後の展望

      2016/10/20

今、深刻化しつつある問題があります。それは全国的に拡大しつつある「空き家問題」です。総務省が2013年度に行った調査結果によると、日本の総住宅戸数6,063戸に対して、そのうちの13.5%に当たる820万戸が空き家となっており、これはなんと約8軒に1軒が空き家という深刻な状態なのです。

 

空き家は、安全、防犯、防災、さらには衛生面など様々な部分において近隣に悪影響を及ぼすため、この空き家問題は国を上げて解決しなければならない、重大な社会問題となっています。ところで、なぜこんなに空き家が増えてしまったのでしょうか。

 

まずはその原因から探ってみたいと思います。

 

空き家が増えた原因1:戦後から供給され続けた新築住宅

空き家が増えるということは、単純に考えると、住宅供給戸数に需要が追いついていないということになります。要するに、住宅が「供給過多」となっている状況が一つの要因となります。この住宅供給過多の状況に陥った一番の原因は、戦後から一貫して続いてきた「新築住宅の供給」です。

 

普通に考えて、国の人口が増加し続けない限り、国が必要とする住宅総戸数は増えないはずです。けれども日本の「新設住宅着工戸数」と、その反対に取り壊される「滅失戸数」には以前より大きな開きがあるのです。

 

国土交通省の「新設住宅着工戸数の推移及び、住宅の滅失戸数の推移」の資料によると、2013年における新設住宅着工戸数が98万7千戸であるのに対し、滅失戸数はわずか12万7千戸しかないのです。つまり2013年だけで約86万戸も日本の住宅総戸数が増えていることになります。このような状態がもう何年も続いてしまっているため、需要を大幅に上回る住宅が存在することになったのです。

 

日本人はアメリカ人に比べ、新築志向が強く常に新しい住宅を好む傾向にあるため、この風潮が戦後の一貫した新設住宅着工を後押ししてしまったのでしょう。

 

空き家が増えた原因2:相続税対策を重視した供給

戦後供給され続けたのは、一戸建てばかりではありません。空き家が増えるもう一つの要因となったのが、相続税対策目的で大量につくられた賃貸物件です。アパートやマンションなどの賃貸物件は、普通に考えればそこに賃貸需要があるからこそ建築するはずなのですが、現実はそうではなく、相続税の「節税対策」として賃貸物件を建築するケースが非常に多いのです。

 

日本では更地を所有していると、非常に高い固定資産税が課税されるほか、相続発生時の相続税評価額も非常に高くなり、結果、相続税も高額になってしまいます。そこで、更地にアパートなどを建築したり、預金で土地を購入してアパートを建築することで、預金金額よりも7割ほど評価額を引き下げることができるため、これによりかなりの相続税が節税できるのです。

 

この節税の恩恵を受けることを目的とした賃貸物件の建設ラッシュが、都市部を中心に発生しました。もともと賃貸需要をさほど気にせず建てているため、あっという間に賃貸住宅は供給過多となってしまい、古い物件を中心に大量の空き家を生産してしまう結果となったのです。

 

アメリカの住宅事情に見る空き家問題解決への糸口

アメリカにとどまらず、先進国と言われるような国は当然に「住宅総量目安」や「住宅供給目標」を設定して住宅が無秩序に新設されることを防いでいます。これは、住宅は公共財として扱われるため、国や市レベルで価値を維持するための枠組みが用意されています。

 

相続対策だからと言って賃貸住宅を無尽蔵に建築できることはありません。ゾーニングと呼ばれ、開発して良いエリアに、年に○○件といった建築できる総量が
あらかじめ決まっているのです。これをやればいいのですが、住宅・建設業界の反対が強くなかなかできないのですが、待ったなしの状況になりつつあります。

 

そして、もうひとつ問題なのが、日本でここまで空き家が増えてしまった大きな要因は、「中古住宅に対する評価基準」にあるとも言えます。日本では木造住宅で築20年は非常に古く、30年も経過すればすでに建物としての価値はないと評価されます。これに対しアメリカの場合は、耐用年数を100年という長いスパンで考えているため、中古物件に対する資産評価が高く、市場で流通しやすいのです。

 

そのため、消費者が皆新築に流れず、既存の中古住宅が社会で循環するのです。日本もこの流れを作ることができれば、この空き家問題を食い止めることができるかもしれません。

 

日本も住宅評価の改善に動き始めた

空き家問題を解決するための第一歩として、国交省は「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」というものを2014年に打ち出しました。簡単に説明すると、従来までの法定耐用年数に基づく原価法による住宅評価ではなく、インスペクション(住宅診断)などの具体的客観的根拠を基にした個別の住宅評価を行おうとするものです。

 

そして、この方針が基となり、2016年1月には、インスペクションの確認を不動産会社に義務化するとの内容の宅建業法改正案が国会に提出されました。今後この法案が施行され、インスペクションの実施が進んでこれば、これまでのような築年数をベースにした単純な住宅評価から、住宅自体の性能をベースにした適切な住宅評価が行われるようになり、結果として中古物件の流通が活性化されることが期待されています。

 

空き家問題は投資家にとってのチャンス

また、空き家問題を投資家目線で見ると、実はそこにチャンスが見え隠れしています。現在、空き家となっている物件は、その所有者が管理に困っているケースが多く、中には市場相場よりも非常に安い金額で売買するケースも増えてきています。

 

これと最近のシェアハウスや民泊ブームも相まって、中古住宅を改装した賃貸物件が増加傾向にあります。空き家を安く仕入れることができれば、かなりの利回りが期待できるため、今後空き家を買い取って賃貸経営をする投資家が増えてくるでしょう。ただし、空き家に投資する際には、購入後にある程度の費用をかけて改装工事をしなければならないため、利回り計算をする時に必ずリフォーム費用も盛り込むようにしましょう。

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